コレクション寄贈25周年企画──國富奎三氏が語る「名画は誰のもの」③


コレクションの1つ、アンリ・マティス画「ニース郊外の風景」

日本を代表して落札──コレクションは市民の財産

私の収集の原資は父の遺産である。コレクターとしての記念すべき第一歩は、1974(昭和49)年に神戸市内の老コレクターから譲って貰ったシャルル・コッテ作「静物」。印象派の影響を受けた明るい色の作品だ。コッテは日本であまり知られていない画家なのに、なぜ買ったのか、自分でもいまだに不思議に思う。ただ、この作品のおかげで、「次に絵画を購入するなら、これ以上のものを」と収集意欲がかき立てられるようになった。

コレクションの中核は印象派。印象派こそ近代絵画の源流で、日本の美術にも大きな影響を及ぼしていると見たからだ。とはいえ、国内の限られたマーケットでは印象派の良い作品に巡り合うことは望めず、75(昭和50)年頃からロンドンのサザビーズやクリスティーズといった世界的なオークションに参加するようになった。

当時は名画を買うのに必要な多額の現金を持ち出すのに厳しい規制があり、関係官庁からL/C(Letter of Credit=円滑な貿易決済のために銀行が発行する支払い確約書)を取ることが一苦労。画商ですら海外オークションに参加することが稀な時代で、日本人の個人では私が第1号だった。

両社は印象派を中心とした売り立てを年に1回、11月末に2日間連続で実施していた。その3日前から内覧会があり、画商はどれを買って帰れば儲かるかを見て回るのだが、私の場合は、独自の「収集4原則」に照らし合わせて目星を付けていった。それは「何より作品の質を重んじること」「日本人である以上、文化財として日本に欠けているものを補う作品であること」「美術史的に見ても価値のある作品であること」「自分自身の心に響く作品であること」である。

さて、オークションはチェアマンが木槌をポンと叩いてから始まるのだが、午後から始まって夕方には終わっていた。当時は両社とも約150点ずつ出品していたから、1点の競売につき2分費やせば全部で5時間かかるという計算になるので、やってられない。だから、せいぜい1分程度。

競り値が掲示板に表示されると、それを欲するコレクターが一斉に胸の前でペンや手帳を立てたり、鼻をつまんだりなど、チェアマンにだけ見えるサインを送って入札の意思を伝えていく。あからさまな意思表示をすると、人間の心理として競争相手が「我も負けじ」と熱くなり、値段が吊り上がっていく恐れが大いにあるからだ。

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