パーキンソン病患者に一筋の光 「三方よし」目指し、姫路で健康食品ムクナを自然栽培

社会・行政

 急速に高齢化が進行中のわが国では、認知症は無論、要介護状態を引き起こすパーキンソン病の患者も増えている。脳の異常で体の動きに障害が現れる病気。難病専門研究機関の調査によると、わが国には現在、推定で約20万人のパーキンソン病患者がおり、65歳以上では100人に1人がかかっているという。原因は神経伝達物質「ドーパミン」の欠乏と分かっている。
 この病気で困っている人を助けようと、健康食品として知られる農作物ムクナ豆の栽培に汗を流す農家グループがある。休耕地を活用し、貴重な日本在来種を無農薬の自然農法で育てることに特化した「兵庫ムクナ豆生産組合」(姫路市安田)だ。
 北インドとネパールが原産地のムクナ豆は、ドーパミンを体内で生成する「Lドーパ」をソラ豆の50倍と他に類がないほど多く含み、インドの伝統医学アーユルヴェーダでは精力剤としても用いられるという品種。日本ではかつて食用に栽培されていたが、豆が固いため調理しづらく、さらに栽培期間が長い上に作業の機械化が難しいことから、昭和初期に途絶えてしまっていた。
 この食物に着目したのが、同組合代表理事で元農林水産省官僚の平野秀樹さん(70)。約30年前、体調を崩した母の病名がパーキンソン病だと判明し、何とか改善させてやりたいと考えていたところ、職場で回覧された情報誌に「パーキンソン病に効く食べ物としてインドでは有名」とのムクナ豆に関する記述を発見したのがそもそもの話。しかも、その筆者の農学者・藤井義晴さん(70)が加古川東高校の同級生という偶然の出会いにも恵まれた。

兵庫ムクナ豆生産組合代表理事の平野さん。「国土保全と地域振興の観点から栽培面積を国境離島にも広げたい」とも話す

 藤井さんに種豆を融通してもらった平野さんは、親友の農家に栽培を依頼。収穫した豆を粉末にして高齢の母に飲ませ続けたことで、その後10年、薬量を増やすことなく余生を過ごしてもらうことができた。母が亡くなった後、ムクナ豆のことを忘れかけていたのだが、退官して帰郷した際に藤井さんと再会したことで記憶が蘇り、情熱に火が灯ったのだった。

厳選された豆だけを用いてパウダー化する

 今の平野さんが目指すのは、ムクナ豆で作った粉末加工品が市場に広く流通し、食べた人が元気になるという、作り手・加工者・消費者の「三方よし」の好循環サイクルの確立。ムクナ豆を扱う競合相手が全国に50社以上もあるため、材料の豆を真っ白で傷のない一級品に絞り込んで差別化を図っている。重要な選別工程は今夏から同市内にある「若葉福祉作業所」に委託することにした。心身にハンディを持つ人々の就労を支援したいとの思いからだ。
 発足3年目の今期は生産者が4者増えて12者になり、これまでの350キロから500キロ以上と約1.5倍の収量を目指す。商品は同組合事務所(電話079-263-8880)かECサイト(https://mucuna-bean.stores.jp)で購入できる。

2024年に理化学研究所が認知症治療への効果の可能性を示唆したことで一層注目が集まっている。「ミクロパウダー」(3,500円/90g)と「きな粉」(1,600円〜/90g〜)

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