播磨地域で活動する文化人・団体の相互交流に取り組んでいる姫路地方文化団体連合協議会(小坂学会長)が独自に選ぶ「姫路文化賞」と「黒川録朗賞」の受賞者が決まった。
文化賞は、隠れた業績を持つ個人や長年にわたって文化活動を続けている団体に贈るもので、58回目となる今年度は郷土史家の難波正司さん(68)と日本画家の山﨑法枝さん(74)が選ばれた。
難波さんは旧香寺町出身。1987年から民俗学の研究団体「常民学舎」の代表を務めると同時に、2009年から15年まで福崎高校で主幹教諭として勤務。幼い頃からシルクロードに魅せられると同時に、松尾芭蕉の研究にも30年以上携わってきた。これまでシルクロードに関する著書など多数出版。また、芭蕉が「奥の細道」に旅立った1689年から333年の今年は俳諧研究書の集大成「芭蕉、旅を栖とす~旅人とわが名呼ばれん~」を出版。歴史や民俗学の研究と教育、普及活動に取り組んできたことが評価された。
山﨑さんは相生市出身。結婚を機に姫路市に移住し、市生涯学習大学で日本画を習い始めた。その後、日本画家の青田賢蔵師や福本達雄日展参与に師事。「草花を包む空気には7色の輝きがある」が信条で、岩絵の具を使った柔らかいタッチで草花や人物を表現する。これまで個展開催や画集出版のほか、2020年から2年連続で日展入選を果たすなど播磨の芸術発展に寄与してきた。
将来性ある活動を応援する黒川録朗賞は、ヴァイオリニストの黒田かなでさん(46)と彫刻家の高田治さん(37)、詩人の中島友子さん(71)、彫刻家の棒谷雅敏さん(49)が受賞した。
文化功労賞には止水性昆虫保全生態学研究家の市川憲平さん(72)(姫路市)と能楽師の江崎正左衛門さん(78)(同市)、特別賞「青少年文化交流」に姫路市児童合唱団が選ばれた。市川さんは同市林田町の伊勢自然の里を拠点に、放棄田を活用したビオトープを造り、水生昆虫の生態研究と保全活動に取り組んでいる。また、市内小学生を対象としたタガメビオトープ観察会を24年間続け、水生昆虫の観察だけでなく自然環境の大切さを伝えている。 江崎さんは江戸時代から続く姫路藩主お抱え能役者の家系に生まれた。1983年に十一世江崎金次郎を襲名し、86年には国の重要無形文化財保持者となった。2015年からは家督を長男に譲り、隠居名を名乗っているが、今も能楽の普及に尽力している。
市児童合唱団は、1963年に播州地域初として発足。国内外で多くの演奏活動を行い、交流を深めてきたことが評価された。来年度は創立60周年を迎える。
授賞式は12月4日10時から高砂市阿弥陀町の鹿島殿で行う。