大人気の漫画作品「ベルサイユのばら」の原作者、池田理代子さんが古代日本を舞台に書き上げた新作オペラ「女王卑弥呼」のエッセンスが詰まったコンサートが11月2日、赤とんぼ文化ホール大ホール(たつの市龍野町富永)で開かれる。
劇中のオーケストラ曲は、ジュネーヴ国際音楽コンクールの作曲部門で2015年に日本人初となるグランプリを獲得した現代音楽作曲家で同市出身の薮田翔一さん(42)の作曲。薮田さんが音楽監修する市民団体「たつのアート実行委員会」が、ベルばらの誕生50周年と同市の市制20周年を記念するとともに、地元からこの新作を盛り上げようと企画した。
同作品は、中国の史書「魏志倭人伝」に登場する倭国の女王・卑弥呼を題材にしたロマン大作。小国同士の争乱が続く古代日本で神の声を聞いて未来を予言するという不思議な能力を持つ卑弥呼が諸国を平定していくのだが、敵国の将と恋に落ちて身籠もったことで能力を喪失し、ついに処刑されてしまう。再び世が乱れていくも、やがて卑弥呼の子が現れて希望の光を灯すというストーリー。
脚本は20年前に出来上がっており、当初は歌舞伎風の演出で上演予定だったが、演者の体調不良でお蔵入りに。薮田さんは、この経緯を池田さんの夫で声楽家の村田孝高さんからの話として、同じく声楽家の姉経由で聞いた。その後、薮田さんに池田さん本人が「生きているうちに舞台にしたい」とオファーしたことで全60曲を提供することになった。完成した舞台は今年6月に東京で初演されたばかり。
今回は、新作オペラの全編から主要なアリアと重唱25曲を厳選して届けるハイライト公演。たつのを拠点に活動する「西播磨交響楽団」の演奏をバックに、初演に名を連ねた村田さんと辰巳真理恵さんをはじめ、薮田さんが選抜したプロのソリスト6人が出演する。ナビゲーターが曲間の物語を繋いでくれるので、作品の世界観を余すことなく堪能できるようになっている。
また、公演前半には薮田さんが故郷・御津町新舞子浜の日の入りの様子を表した新曲「ブルーアワー」や、説明不要で楽しめるユニーク歌劇「猫のオペレッタ」も披露。ブルーアワーは20周年記念で同市に寄贈するもので、今回が初披露となる。
本番に向けて同楽団メンバーは週1回のペースで強化練習を行っており、今月13日には薮田さんも東京から帰郷して参加。指揮者の原田芳彰さんとともに取材に応じ、「新作をどんどん広めたいのはもちろんですが、物語以外でも楽しめる要素が満載の構成なので、まずは地元の皆さんに楽しんでもらいたい」(薮田さん)、「まさに女性の活躍ぶりが目覚ましい現代世相に通じるオペラ作品。人間のドロドロした憎悪や美しい慈愛の情を音楽にした薮田さんの力量がすごい。ベルばらファンならずとも、ぜひおすすめしたい」(原田さん)と話した。

楽団の強化練習中の薮田さん(右)と原田さん
14時開演、16時過ぎに終演予定。チケットは指定席のS席4千円、自由席のA席3千円、B席2千円で、いずれも大学生以下は1千円引き。ガレリアアーツ&ティー(電話0791-63-3555)と赤とんぼホール(電話0791-63-1888)、チケットぴあで販売している。<2025/10/23>