【新時代に挑戦⑪】田中酒造場

「日本酒を国内だけで消費する時代は終わった」、フランス起点に世界展開

天保6年(1836)創業の造り酒屋を切り盛りするかたわら、「はりま酒研究会」会長として地元酒造業界を牽引する田中酒造場の田中康博社長。2年前の2020年3月の「GIはりま」認証時には関係者間の調整に奔走した人物だ。その功労者が、今度はフランスのワイン産地との交流に力を注いでいるという。田中社長に播磨から世界へ打って出るための戦略と展望を聞いた。

フランスで播磨の日本酒をPRする田中酒造場の田中康博社長(左)

兵庫県産山田錦のみを使って醸造した播磨の酒蔵の日本酒が「GIはりま」に認証された。

GIとは、各地の特産品の品質に大きく影響を及ぼしている気候や地質といった産地固有の風土と伝統的な生産方法などを地域ブランドとして登録し、国が保護する地理的表示制度のこと。仏国の「ボルドー」や「シャンパーニュ」を例に挙げると分かりやすい。

「はりま」のGI認証は、当時の井戸敏三知事からの提案がきっかけだった。麹菌で醸した日本酒について最古の記述がある「播磨国風土記」が2015年に編纂1300年を迎えるので、「播磨の各蔵で記念酒を作れないか」と仰った。日本酒発祥の地、宍粟市の庭田神社で採取した麹菌を使って各蔵で「庭酒」をつくるのに成功し、いろんな日本酒PRイベントを展開しているところに国税局から「GIを取得しないか」と案内された。

20年3月に認証され、これから世界に打って出ようとした矢先のコロナ禍。

制約がある中、手始めに姫路城に歌舞伎俳優の中村壱太郞さんを呼んでYouTubeなどでオンラインイベントを催したほか、兵庫県出身で世界的に活躍する山下春幸シェフの料理とのペアリング食事会、仏国のMOF(国家最優秀職人章)受章ソムリエが監修した輸出用の裏ラベル作成など、特に仏国を意識した様々な取り組みを実践してきた。

仏国キャンペーンの成果は?

驚くことに、仏国コンヴェルジョンス・ガローヌ地域(27コミューン共同体)から22市町の播磨広域連携協議会に対して、自治体間ではなく広域での連携交流の申し出が届いた。28蔵しかない我々と比べて、同地域は10分の1の面積なのに339ものワイナリーがある。これは大きな話だが、行きがかり上、私が双方の連絡役になった。

昨年秋の収穫祭に呼ばれ、現地で播磨の物産展を催した際には、先方の代表と姫路市長とのウェブミーティングをセットした。近い将来、正式に姉妹提携が行われることになるはずだ。

空席だらけの飛行機に搭乗してまでやって来たご褒美の意味もあってか、私はシュバリエという騎士の称号を授かるというおまけ付き。何でも、同地域のワイナリーをいつ訪ねても、顔パスで入れるようになったらしい。

仏国からはコロナ前に観光客が急増していた。姫路・播磨への注目度が高い。

そこはやはり世界最高傑作の木造建築である姫路城の求心力。おかげで実は今、現地の大手旅行ガイドブック「petit fute(プティ・フテ)」がアフターコロナの需要を当て込み、兵庫県の酒と温泉を題材にした特集を組みたいと言ってきている。25年の大阪・関西万博を見据えた動きだ。あちらはそういう動きが実に早い。これを仏国の方々と播磨の酒をつなぐ足掛かりとしたい。

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