「日の入」のオークションはライバルが多いことが内覧会の様子で分かっていたから、私も特に神経を集中させた。すると、8回目の競りでサインを出す人が減った気配を感じた。緊張しながらサインを出した10回目、木槌が素早く叩かれて落札できた。これは、当時珍しい日本人の姿を見たチェアマンが特別に配慮してくれたんじゃないかと思う程の一弾指だった。

それにしても、そんな短時間の中で世界中から集まった超一流の人たちが付ける値段がほとんど同じだから不思議だ。その中でどうしても欲しい人だけが、やや高い値を出す。途方もなく高い値段が付けられることはない。それをとんでもない事をしでかしたのが、バブルの頃の日本人。ニューヨークでルノワールを想像を絶する高額で落札した例もある。

私は作者のネームバリューで買ったり、転売・投機を目的に買ったことは一度もない。当時たった一人だった日本人のメンツにかけて、国際的に見て恥ずかしくない行動を取ってきたと自負している。

ほかにも、ドガやピサロ、ルオーなどの質の良い絵画を購入できたが、最近はそのような作品がめったに出品されなくなったようだ。これはつまり、名画を手放す人が少なくなったということ。一時は私の所にもサザビーズやクリスティーズから「売らないか」という手紙がよく届いていた。だが、「寄附をした」と返事を出してからはピタッと言ってこなくなった。

このことは言うなれば、國富コレクションがすでに市民の財産になっているということを世界最古の競売会社が認めたということではなかろうか。最後に、千足伸行・成城大名誉教授がコレクションの図録に寄せてくれた言葉を紹介したい。

「名画は誰のものか? 名画は万人のものである」

姫路市民に一層、國富コレクションに親しんで頂けたら幸いだ。
〈おわり〉

國富奎三(くにとみ・けいぞう)昭和13年岡山県総社市生まれ。昭和47年に姫路市青山で國富胃腸病院を開院、現在は同院名誉院長。ほかに姫路市美術品等購入審議委員会委員・部会委員、播磨空手道連盟名誉顧問を務めている。

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