コレクション寄贈25周年企画──國富奎三氏が語る「名画は誰のもの」①


國富氏が一番気に入っているというモネの「ル・プティ=ジュヌヴィリエにて、日の入り」

評価高まる姫路美術館──姫路発の世界的研究に期待

世界文化遺産・国宝姫路城のお膝元にある姫路市立美術館(以下、姫路美術館)で、このほど国宝の日本画が初めて展示された。これまでの姫路美術館では到底考えられなかったこと。
美術品の中でも絵画というものはその性質上、温湿度や光、空気中の成分まで厳密に調整して保管する必要があるため、扱いが陶磁器や茶道具と比べて非常に難しく、そのための設備が整っていなかったからだ。
ここ2カ年で約6億円をかけて館内設備をアップグレードした成果。ようやくここまで整ってきたかと感慨深く思う。

姫路美術館がどんどん良い方向に変わってきていると同時に、手前味噌になってはいけないが、國富コレクションも国内外の美術関係者や芸術愛好家の間で評価が高まってきていることを紙面を借りてご報告したい。

最たるものが、私も一番のお気に入り、クロード・モネの「ル・プティ=ジュヌヴィリエにて、日の入り」(1874年作、以下日の入)。モネと言えばパリのマルモッタン美術館が所蔵する「印象日の出」(72年作、以下日の出)が有名だ。「印象派」という言葉の由来になり、美術史上においても高く位置づけられている。この「日の出」と「日の入」は、ともにモネが独仏戦争(70年)の戦禍を逃れるために向かったパリ近郊の町アルジャントゥイユで描いたものだ。

だが、「日の入」が競売に掛けられた時の題名は「アルジャントゥイユの入江の夕日」だった。観る人にはその方が分かりやすく、美術商にとっては高く売れるからだ。
しかし、実はこの絵画の原題は「小さな入江の日の入り」となっている。モネのレゾネ(総目録)にも載っているから間違いない。つまり、「日の入」は「日の出」と対をなす絵画であるということ。モネは「日の出」と「日の入」を強く意識して描いたのだ。
これが近年の研究ではっきり分かり、パリのグラン・パレ美術館が「日の入」を貸し出して欲しいと言ってくるなど、姫路美術館の名声が徐々に上がってきていることを知ってほしい。

モネの作品は1900年以降の「睡蓮」がオークションでしばしば出品されるが、私は初の印象派展が開かれた1874年の作品が欲しいと思っていた。「日の出」と「日の入」の2年間でモネの表現がどう変化したのか詳しく研究すれば近代絵画発展の貴重な資料になると考えたからだ。マルモッタン美術館と姫路美術館とでこの2つの絵画を共同研究し、世界的な論文を姫路から発表して貰いたいと願っている。

ところで、どこの美術館や博物館でも常設展示の作品は、その内容で当該施設のレベルが決められてしまうというほど一番大事なもの。それゆえに、何度も来館する人の目にも耐え得る、それだけの値打ちがあるものでないといけないというのは言わずもがな。

だが、姫路美術館に國富コレクションが存在することの意義を理解していただけない方がいらっしゃる。「館内展示スペースの4分の1を國富コレクションが占めているせいで、市民の税金で集めた館蔵品が隅に押しやられている。けしからん」というのが論調だ。残念なことだが、そのように美術品の価値が分からない方には金額で換算して納得して貰うしかない。

分かりやすい例を挙げよう。
モネが1890年に描いた25連作「積みわら」の一つが今年5月にニューヨークで開かれたサザビーズのオークションにかけられた。この時の落札額がモネの作品としては史上最高額の約120億円だったというのだ。
つまり「日の入」はそれ以前の作品だから、さらに貴重だということ。著名な美術評論家は「今の貨幣価値で100億円以上する」と仰った。
〈つづく〉

國富奎三(くにとみ・けいぞう)昭和13年岡山県総社市生まれ。昭和47年に姫路市青山で國富胃腸病院を開院、現在は同院名誉院長。ほかに姫路市美術品等購入審議委員会委員・部会委員、播磨空手道連盟名誉顧問を務めている。

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