【今こそ人間学vol.11】 面(おもて)に見(あらは)れ、背に盎(あふ)る

コラム

 人の心の中、腹の中はまず面(顔)に写し出され、その人が如何に陰徳を積み上げてきたかは、その人の後ろ姿(肩から背中)を見れば分かるものです。
 最近はテレビで世界中のリーダーたちの面容や立ち居振る舞いを見るにつけ、今はどの国も世の中を任せられる人材が不足していると思わざるを得ません。人間は自己の利害得失に流されるようになると、人間から動物、畜生へと戻ってしまうようです。損得だけで生きている人の顔はどこか動物的に見えるのです。
 もし、気になる人がいるのなら、その人の後ろ姿を見ることをおすすめします。面容は化粧で誤魔化せますが、後ろ姿に潜む真実は繕っても着飾っても隠せないからです。
 今、我が国において最も大切なことは、日本本来の社会秩序、「礼」の再構築です。以前ご紹介した『大学』という書に「其の国を治めんと欲する者は、先ずその家を斉(ととの)う。其の家を斉えんと欲するものは、先ず其の身を修(おさ)む」とあり、さらに、「天子自(よ)り以(もっ)て庶人に至るまで、壱(いつ)に是れ皆身を修むるを以て本(もと)と為す」とあります。これは、どんなに高貴な家に生まれても、逆に普通の庶民の子に生まれても、人として世の中に立つ人間(これを人物といいます)になるには、自分の身を修め、人間組織の根幹である家庭をしっかり斉えなくてはならないという教えです。斉った家庭には和があり、各自が正しい行いをし、先祖の徳を大事にしているものです。
 「面に見れ、背に盎る」ように、善行を重ねる家には徳が積まれていきます。これは会社も国も同じこと。私たちの郷土が幾久しく繁栄するには、一人ひとりが日本人の自覚と誇りを持って国民としての責任を果たしていくしかないのです。

(一般社団法人 令和人間塾・人間学lab. 理事長 竹中栄二)

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