赤穂市尾崎の密集住宅地で、同市と兵庫県の古民家再生補助金を活用した伝統工芸「赤穂緞通」の貸し工房がオープンした。
緞通は中国由来の言葉で、木綿や絹の高級手織り絨毯のこと。赤穂緞通は、大陸から渡来した絨毯の美しさに魅了された1人の赤穂出身女性が、30年近い試行錯誤の末に明治7年、ようやく商品化に成功。すぐに赤穂沿岸部の塩田で働いていた女性たちの副業として広まった。
製品は繊細で美しいオリエンタル文様とハサミで毛先を均す独自の技法「摘み」がもたらす柔らかな手ざわりが特徴で、高級品として佐賀の鍋島緞通と大阪の堺緞通と並ぶ日本三大緞通の一つに数えられるほど認知度も高まった。やがて皇室の目にも留まり、お召し列車や御所に採用されたほか、海外にも流通していった。
ピークの大正期には年間約3千枚を生産。1畳敷を1枚織るのに、現代の技術承継者なら半年かかるが、当時の女工は1カ月で仕上げたという。
しかし、日中戦争の影響で物資が統制されると各工場は閉鎖の憂き目に。さらには機械化になじまないため、戦後、産業構造と労働者意識が大きく変化するにつれて担い手が激減し、いよいよ技術伝承ができなくなった。
平成に入り、ようやく赤穂市教育委員会が当時唯一の技術保持者による講習会を開講。修了生が徐々に増え、現在は約20人の作家がそれぞれ工房を構えて活動展開するまでに回復した。作品に数百万円の値がつく作家もいる。市も地元文化の新たな柱として発信をサポートする。
新工房のオーナーは、設立10年目のNPO法人「赤穂緞通を伝承する会」(会員15人)で理事長を務める小島由美子さん。空き家になっていた祖母の自宅を大幅改装して広い作業場を確保し、1畳敷と小型のはた織り機を各1台備えた。屋号は「たくさんある文様の名称にちなんで第2、第3と工房を増やしていきたい」との願いから、自身の好きな文様の「〜波nami〜」と命名した。月3千円でNPO会員に貸し出す。土・日・月曜には一般の見学も無料で受け入れている。

赤穂緞通の貸し工房を開設した小島さん
小島さんは「若い織り子を育てて製法技術をつないでいきたい。そのためにも世界に通用する作品を織って商業ベースに乗せていく」と意欲的に話す。問い合わせは電話0791-43-1820。<2026/01/09>





